私は、「これは私の好きな作品だ」と思いました。
だから一層強く思ったのかもしれませんが、
何より「ゴンドラ」が純粋に一人の作家の作品としてなり立っているということに
心を打たれたのでした。
それは、発想にはじまり、創造のあらゆる過程に、
一人の作家の魂と技が通っているということです。
現在、数多く作られている映画のなかで、このような純粋さをもち、
しかも傑作である作品がどれほどあるでしょうか。
私はこの困難な状況のなかで、これ程の作品を生みだした努力と才能に心から敬服したのです。
日本の映画は古い映画の世界からではなく、
全く違う途をたどって現れる新しい才能によって途がひらけるだろうとは思いつづけていましたが、
「ゴンドラ」が、そのような状況をまさにつくり出していると思いました。
ところで、主役の青年が、あなたにそっくりなので驚きました。
多分、あなた自身この作品にかけた想いが、この青年を選ばせたのでしょうね。
とにかく、かがりちゃんは抜群でしたが、
青年も他に替えられ存在感があって良かったし、他の俳優さんもぴったりでした。
映画の内容についての感想にあまり触れられませんでしたが、
「ゴンドラ」を見せていただいて、あなたにまず伝えたいと思ったのは、こんなことだったのです。
とにかく、第一作でこれ程の作品を創造された才能に心から拍手を送りたいと思います。
三月三日(きょうはひな祭りですね)
羽田澄子(記録映画作家)