出産時の事故や、生まれつきの病気や難病など様々な事情によって、大きな身体的負担を持つことになった人たちが「普通に生きる」ことが困難なのは言うまでもない、と多くの方が思われることでしょう。実はこの映画には、〜自立をめざして〜というサブタイトルがついているのですが、「まさか、こんなに重い障がいのある人たちが、普通に生きるどころか、自立だなんて ・ ・ ・」と、違和感を覚えたり、絶句して眉をしかめる方は、意外にも、ボランティアや地域福祉に精通されている方、社会福祉の要職につく方にも多いのでした。
しかしこの映画に登場する人たちは「どんなに重い障がいがあっても、地域の中で普通に生きられる社会をつくる」ことを理念に、不屈の信念で理想を目指し、夢を実現してゆきます。重い障がいの子をもつ親たちに対して、多くの人が普通に抱くイメージの暗さや偏見を見事に打ち破り、親たちは柔軟かつ大胆な発想で、自らの道を切り拓き、明るく自己実現を果たしてゆきます。
はじめは、我が子のために、親なき後の未来を案じて始めた活動がきっかけでしたが、親たちが獲得した"場作り"は、やがて障がいをもった子はもちろん、親自らと、地域社会をも豊かに育んでゆきます。
富士・富士宮市で親たちの努力によって作られた重症児の通所施設を五年にわたって追ったこの作品は、重い障がいのある人たちの世界だけをテーマにした映画ではなく、大きな意識変革によって社会を突き動かした、普通の親たちの、優しく、熱く、力強い行動の記録です。親たちや地域が、成果として得たものが何だったのか。それをぜひご自身の目で確かめてください。そして、成熟した社会づくりのために力強く今も闘い続けている、小さな町の大きな動きをぜひ、取材していただきたいのです。
日本は今、厳しい試練に立たされています。繁栄の裏で現代社会が失ってきたものの大切さと、生みだしてしまった「いのちの格差」の問題が顕わになり、今こそパラダイムシフトが必要な時であることを、この映画に登場する人たちが教えてくれます。被災されている多くの方々と、それを支えようとしている人たちが、明日と向き合う勇気を再び強く得るためのヒントも、この映画の中に見出すことができます。そして、多くの親たちが、生まれてきた我が子に障がいがあるとわかった時から、深い深い絶望の淵を彷徨い、死を想い、やがて笑顔を取りもどしてゆく過程で気づいた価値観の変化にも、未来へと明るく生き抜くヒントがあるように思います。
災害だけでなく、事故、病気 ・ ・ ・と、誰の身にも明日、何が起こるかわかりません。今の社会のままで、今の意識のままで、身に起こるすべてを受け止め、最期まで「普通」に笑顔で生きられるでしょうか。
媒体や発言する場をお持ちの方は、ぜひ、ご意見を発信してください。映画を飛び越えて、舞台となった施設や映画に登場する人々を広くご紹介いただけたら、制作者として本望です。