映画 伝 承 -Transmission - 監督の構成意図

 映画「伝承-Transmission」が完成する10年あまりの歳月で、監督が自筆で残した手書きのコンテは相当な量になになります。ここに、その一部をご紹介します。
できれば、「伝承」をご覧になった方に、深く読み進めていただきたいページです。

メモ1 ■渡辺祥充自筆による“構成意図”
メモ2 
■1988年頃の渡辺祥充自身による“構成意図
メモ3 
■1991年頃の渡辺祥充自身による演出コンセプト



メモ1 渡辺祥充自筆による“構成意図”

 

   “伝承”TRANSMISSION 

“伝承”とは、人間が来世の人間の為に人間の最も大切な伝統技術儀式などを継承させ、幾世代にもわたって何百年何千年と時を越えて 受け継いでいくことをいう。
 東南ASIA大陸にはその時や空間を越えて原色の“神の形”(存在)が今もなお人々の心の中に深く“伝承”されている。

 この作品“伝承”は、その東南ASIAのNEPAL 西TIBET LADAKH KASHIMIR INDIA THAILAND (INDONESIA) などの各地で現地の人々を起用し演出したIMAGE映像を中心に遺跡や宗教建築物 自然現象 神の信仰を図形化したマンダラや人々の祈りの形などを通して 仏教の五大要素である
地、水、火、風、空(宇宙) をTHEMAに構成されたIMAGE映像である。

 その構成には 映像はサイレント形式で言葉やセリフなどはなく 各所にTHEMAに則したIMAGE的な字マクが映像を補い 呼吸音、心臓のコドウなどのSOUND EFFECT(効果音)とORIGINAL SOUNDである“現象音楽”とで演出されている。
 “現象音楽”とは、あらゆる出来事は地球的レベルで反復(現象)として定位されている。心臓、血の流れ、水の流れ、波の寄せ返し 等といった具合に“現象音楽”とは、これらの現象音と同一線上に 位置できる、あるいは近づいてゆく状態のことをいう。

 この“伝承”は、天界の門からツエをついて出てくる老僧、火の図形の祈りの中で子供の頃の過去の風景を回想する僧や、宝貝から風の音を聞こうとするTIBETの双子の少女、僧たちの祈り、火の階段を登るカラスの 仮面の少年僧や、TIBETのラマ教の真言が書いてある風紋が風になびいているIMAGE映像で、STORY性は、あるようでない。

 この構成は、観ている人の体験や価値観によって、その印象が異なるが、ブニエルとダリの“アンダルシアの犬”やKENETH ANGERなどのMAGE映像と同系列の種類である。
 これらの映像は、観賞したあと、ある程度の時間をかけてから何かわからないが TOTAL BALANCE が良い印象に心の中に残存するのである。

 この“伝承”の 地、水、火、風、空(宇宙)のTHEMAの何かが心の中に残存していれば、この映像作品は成功といえるであろう。

Yoshimitsu Watanabe 

 



メモ2 
1988年頃の渡辺祥充自身による構成意図

 

 構成意図

“TRANSMISSION”とは、日本語で“伝承”という意を持っている。 “伝承”とは、人間が来世の人間の為に 何かを継承させ、幾世代にもわたって、何百年も何千年と一つの伝統、技術、儀式など受け継いでゆく事をいうのだが、われわれのこの“TRANSMISSION”もそれと同様に時や空間を越えて、この現代社会が忘れている言葉“伝承”を通して人々になげかける事を望んでいる。

 この“TRANSMISSION”は、東南ASIAのNEPAL WESTTIBET INDIA THAILAND各国の宗教建築物 宗教美術 自然現象 人間の心の形 人間の神に対する信仰を 図形化したMANDARA そして 人間をとりまく大自然などで 神、宗教、大地、祈り、宇宙 をTHEMAに構成するものである。

 その構成は、仏教聖典や聖書の構成のように大きな意味を それらが“節”や“章”にわけて多角的な思想や言葉の表現の複合から生まれる一つの精神的なモンタージュであることがいえる。

 それと同様にこの“TRANSMISSION”は、THEMAに則したそれらの多角的な
映像、音楽、SOUND EFFECT の同調の複合から生まれる。仏教聖典や聖書の効果にも似た精神的なEMOTIONを人々の心の中に何かを残存させる聖典的構成となっている。

 観賞する際に、言葉に表現できぬその何かが人々に伝われば、われわれの意図は完結するであろう。

12TH DEC. 1988    
     “W”PROJECT  




メモ3 1991年頃の渡辺祥充自身による 演出コンセプト

“伝承”TRANSMISSION 

人間の 精神は もう すでに 死んでいる。
火のついた 家の中で それを 知らずに子供が オモチャで 遊んでいるかのように
人々は 知らぬ間に 自己破壊の道に落ちてゆく地球的 LEBELで 心を 失いつつある

21世紀の 精神哲学は まさに 宗教が 信じられなくなった 時代であり 心の安らぎ 対
物質的 豊かさに 較べて 精神的な高揚が 求められている
文明が 進歩するのと 反比例して 精神的な 価値観が後退してゆくのである

この作品“伝承”とは そうした 現代社会が 忘れている “心”を 人々に 伝える為に制作したものである

3000年以上の歴史が ある TIBET仏教は、“大宇宙”の 原理哲学”を 持っている
その “大宇宙の原理哲学”とは 大宇宙の総ては五種の形の 炎によって 包み込まれ、
人も動物も植物も石も 世の中の総てのものが地、水、火、風、空 の 五大要素の
大宇宙の原理で つくられていると西蔵聖典は語っている

この“伝承”は その五大要素である、地 、水 、火 、風 、空 、の 五章で 構成され
東南ASIA を 舞台に 7カ国、42カ所 LOCATION で ある