“伝承”とは、人間が来世の人間の為に人間の最も大切な伝統技術儀式などを継承させ、幾世代にもわたって何百年何千年と時を越えて 受け継いでいくことをいう。
東南ASIA大陸にはその時や空間を越えて原色の“神の形”(存在)が今もなお人々の心の中に深く“伝承”されている。
この作品“伝承”は、その東南ASIAのNEPAL 西TIBET LADAKH KASHIMIR INDIA THAILAND (INDONESIA) などの各地で現地の人々を起用し演出したIMAGE映像を中心に遺跡や宗教建築物 自然現象 神の信仰を図形化したマンダラや人々の祈りの形などを通して 仏教の五大要素である
地、水、火、風、空(宇宙) をTHEMAに構成されたIMAGE映像である。
その構成には 映像はサイレント形式で言葉やセリフなどはなく 各所にTHEMAに則したIMAGE的な字マクが映像を補い 呼吸音、心臓のコドウなどのSOUND EFFECT(効果音)とORIGINAL SOUNDである“現象音楽”とで演出されている。
“現象音楽”とは、あらゆる出来事は地球的レベルで反復(現象)として定位されている。心臓、血の流れ、水の流れ、波の寄せ返し 等といった具合に“現象音楽”とは、これらの現象音と同一線上に 位置できる、あるいは近づいてゆく状態のことをいう。
この“伝承”は、天界の門からツエをついて出てくる老僧、火の図形の祈りの中で子供の頃の過去の風景を回想する僧や、宝貝から風の音を聞こうとするTIBETの双子の少女、僧たちの祈り、火の階段を登るカラスの 仮面の少年僧や、TIBETのラマ教の真言が書いてある風紋が風になびいているIMAGE映像で、STORY性は、あるようでない。
この構成は、観ている人の体験や価値観によって、その印象が異なるが、ブニエルとダリの“アンダルシアの犬”やKENETH ANGERなどのMAGE映像と同系列の種類である。
これらの映像は、観賞したあと、ある程度の時間をかけてから何かわからないが TOTAL BALANCE が良い印象に心の中に残存するのである。
この“伝承”の 地、水、火、風、空(宇宙)のTHEMAの何かが心の中に残存していれば、この映像作品は成功といえるであろう。
Yoshimitsu Watanabe