映画 伝 承 -Transmission - サウンドトラック Transmission


たくさんのご要望がありましたので、三星村で「伝承」サウンドトラックCDを制作しましたっ!

  Transimission

by SHIGERU YAMANAKA
(C)1992 三星村




映画「伝承-transmission」は、
その全編が、
山中 茂 の音楽とのコラボレーションで成り立っている。

このCDサントラ盤には、当然ながらその全曲(+1曲)を完全版で収録した。

1. 5’15” 伝承/地 天界の門 Opening
2. 5’00” 伝承/水
3. 5’20” 伝承/火
4. 5’08” 伝承/風
5. 8’38” 伝承/空
6. 3’58” 伝承/祈り
7. 2’16” 伝承/天界の門 Crosing
8. 3’04”  〜想い〜 
(サービス・トラック)  サンプルが聞けます
9. 4’35” 伝承/テーマ<レクイエム>







友へのレクイエム

 彼の生命をかけた行為であるこの映像は、あらゆる意味で、限界以上のことをぼくに要求した。
 そして無心に鍵盤に向かったぼくは、おそらく余計な口出しをする奴がいたら殺しかねないような形相をしていたに違いない。自分のなかにしまいこまれていたすべてに不眠不休で向き合いながら、ぼくも死を覚悟していたような気がする。だが小手先ではすまされないこの仕事は、不思議なことにぼくに苦痛を与えなかった。

 映像と音、そのアプローチのすべてがごく自然にシンクロしていた。そしてそこに居るはずのない渡辺祥充が、確かに居た。

 これからも新たな出逢いによって、ぼくの新しい地平は切り開かれてゆくだろう。しかし、
ぼくにとってこの作品は単なる映画「伝承」のサウンドトラックではない。このアルバムは、大切な自分のファーストアルバム-YAMANAKA-だと思っている。

山中 茂   

     


  山中 茂 - Shigeru Yamanaka - Profile

 1960年1月17日東京生まれ。本名・山中 茂 -Shigeru Yamanaka-。
13歳の頃から音楽を志し、1984年から86年にかけて、女流作家で画家の味戸ケイコ氏の個展ための環境音楽を制作。
 それ以降も山中 茂 名で、作曲&Synthesizer奏者として、
映画「伝 承 -Transmission」、ビデオ作品「風流れるままに -アルツハイマー病の妻と生きる」をはじめ、数々の映像作品のテーマ音楽等を手がけてきた。
 1999年まで暮らした自宅は、千葉県の九十九里にほど近い築200年を経た旧農家で、敷地内に小さいが森を有し、氏神様の祠を奉り梟と住処を共にする環境であった。この森のなかにあって山中は、森や宇宙の精霊たちとの共鳴を得ながら自らの音楽性の基盤をつくった。
 1996年6月には、喜多郎や宗次郎といった日本でも有数のマインド系ミュージシャンを輩出したサウンド・デザインからプロジェクト名AIR ELEMEMTを名乗って、自身のデビューアルバム「Crystal Fantasy」(SDCH 1072 Stress Free) が発売され、ネーザン・イースト、カレン・ブリックスらをセッションミュージシャンに迎えたライブを青山スパイラルホールで行うなど、ニューエイジ界にも新風を巻き起こした。
 重ねて1996年からは、自らが音楽を担当した映画「伝 承 -Transmission」の長期ロングラン上映を支える三星村のスタッフの一員として、伝承のファンの熱望に応えると、1997年9月からは 3回にわたって、SHIGERU YAMANAKA 単独ライブ<
The Earth is Blue >を行い、そのセンシティヴなサウンドは絶大なる支持を得てきた。
 が、1998年4月、山中は大きな交通事故に遭遇し重傷を負った。
 楽曲を自ら演奏する山中にとって右手小指の複雑骨折は致命的とさえ思える大きな負傷であった。
 長期に渡った入院生活で、精神的にも肉体的にも生死の境をさまよった経験は、自身と音楽とのスタンスにも多大な影響を与え、1999年からは、木霊-Kodama- と改名すると新しいアルバム『木霊1』を三星村からリリース。もういちど独りで自身の音楽性の原点にたち戻るための新たな出発を謀ることを決意すると、新たに、木霊-Kodama- SOUNDの構築に精を出し、1999年10月には東京都下東青梅市・さらさやで激烈なファンの熱望に応えて奇跡の復活ライブを遂げた。
 
そしてミレニアムを迎え、
 映画「伝 承 -Transmission」のロングロードショウの終焉と共に、4年に渡って上映を続けてきた古巣・ほびっと村でのライブ“訣別”by 木霊-Kodama- をきっかけに、2000年5月、東京都西多摩郡檜原村・フジの森で行った初めての野外ライブを皮切りに、7月には檜原村・やすらぎの里で、中学生のためのふるさとコンサートを精力的に行ったが、10月、長野県松本市の神宮寺(高橋卓志住職)にて、詩人・山尾三省氏とのジョイントライブを最後にライブ活動を休止した。
 木霊-Kodama- が最後に手がけたテーマは、
ALL IS FULL OF LOVE
 この年、初春から取り組んだ、海洋学者 レイチェル・カーソンが遺した数々の作品に共鳴して作った新作「
ALL IS FULL OF LOVE for Rachal」を完成させ、木霊としての全活動を封印した。
 2011年に完成したドキュメンタリー映画「普通に生きる」で、それまで木霊の活動を支援してきたプロデューサー貞末麻哉子によって、「木霊1」の楽曲の一部と、2000年7月に檜原村のために作った楽曲が、サウンドトラックに器用された。

また、2020年に完成したその続編「普通に死ぬ〜いのちの自立〜」でも、
木霊の楽曲が使用されている。



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■Soundtrack ライナーノーツより■

   風のトランス・ミッション

河村 悟 (詩人)         


音楽はカラスである。

光のカラス。

 洪水後の空に舞い上がり、世界史の終りの夜を横切る。
空ー間を切り裂く牙-くちばしを持ち、単独で
<箱船=共同体>の外へ飛び去り、跡をくらます。
ノアの一族に「意味」を持ちかえることをしなかった最初の裏切りの鳥?
 太陽に近づきすぎて鑞の羽が溶けて墜落する少年イカルスに先行するカラス。

 あのぬばたまの黒い翼は、真夜中の太陽の色。
風のスダマが密集する羽毛のせいで、わたしたちには黒くしか見えない。
それはけっして罪の色彩ではない。

 カラスは夜をつくる。

 闇のカラス。

 つがいの共同体を越えて、虚空の絶対性に向ってはばたく夜の鳥。

<言葉>の外にひろがる光の砂漠に跡を絶った死の鳥。
(ヘブライ語で「箱舟」は同時に「言葉」も意味する)。
円球を突つき、ヒカリモノをはこぶ<ブラック・エンジェル>のように、
地上の義務と任務を超えて、光の<鴉=片>をはこぶこと。
鴉の片羽として、神の密使をはたすこと。

 それが夜をつくる音楽である。

 あるいは自由の鳥の名前。

 詩人アンリ・ミショーなら、すかさず<エラン=ヴィタールの鳥>と称ぶことだろう。

 ミショーによれば、音楽は「肉体をもぎとり、具体的なものを抽象」する。

 地球にもう一度、あの<洪水>を!

 壁も柵も檻も、夢も物もイデアも、なにもかも「もぎとり」、
夜のなかに覆い尽くすこと。音楽をおいて他にそれを果すことはできない。

 そして、ふたたび<言葉>の外へ。

  空間の鳥に<生の跳躍>を!

 こんどは<太陽>から<月>に、さらに<月>から<稲妻>に向って飛翔する。
ウパニシャッドで云うところの「転生」とは、音のこうしたモレキュラーな舞踏のことである。

 音楽はメタモルフォーゼする。

 「闇から闇へ走る稲妻」(アンリ・ベルグソンの言葉)のように、
                         炸裂する生-火花。

 音楽は空間の火花である。

 それは種子-スペルマのように飛び散り、爪先旋回して開花し、
またたくまに分解して崩壊する<銀河>である。

 それゆえ音楽家は「カガミの凧」虚空に飛ばし、
<光-音-生>の放電現象をいっぺんにリフレクションしようと欲する。

 こうして音楽家は、天に釣針を垂れて<稲妻>を釣り上げる漁師である。
身体は、そのとき、うなりとうねりをあげて振動するエレクトリックな<導体>に転位している。

 音楽家は<伝導>であり、音楽は<伝導の伝導>である。

 そこに、<風>が吹き渡る。

 サンスクリットでは、「風」は「糸」[=スートラsutra]と称ばれ、
経典を織りなすテクスチュアーと同義である。

 風=糸が世界の始まりと終りをつなぎ合わせ、
神々の世界と月下界をむすび、被造物の生のほつれ糸をかがむ。

 音楽は、こうして「結合線・連結線」を意味する<ligature>という、
たえまなく変位し脈動する<超=ヒモ>となる。

 世界じゅうのあらゆる場所に、連結と結合の<結び目>をトランス・ミッションすること。
「伝承」から「伝導」へ!

 音楽は風の果実である。

    Tokyo le 25 juillet 96     

   




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